
夏は気温や湿度が上昇し、熱中症を発症しやすい季節です。熱中症は「屋外で発症しやすい」と思われがちですが、気温や湿度などの条件により屋内で発症することもあるため、注意が必要です。熱中症対策を行い、暑い夏を乗り切りましょう。
もくじ
1.熱中症の3つの要因
(1) 環境要因
(2) 体の状態
(3) 行動
2.熱中症を防ぐためのポイント
(1) 水分と塩分をこまめに補給する
(2) 暑い時期の食事のポイント
・ 朝食を取る
・ ビタミンB1を摂る
(3) 暑さを避ける
(4) 体を冷やす工夫をする
3.熱中症の主な症状と応急処置
1. 熱中症の3つの要因
熱中症とは、高温多湿の環境下で、発汗による体温調節機能などが上手く働かなくなり、体内に熱がこもった状態をいいます。主な症状はめまいや倦怠感、吐き気などがあります。熱中症は、次の3つの要因により起こるといわれています。
(1) 環境要因
熱中症の発症には、気温や湿度の高さなどの環境要因が関係しています。熱中症を発症しやすい環境の例は、屋外では日差しが強く、風が弱い日など、屋内では風通しの悪い密閉空間、エアコンの無い部屋、加熱調理中のキッチン、浴室などが挙げられます。
(2) 体の状態
年齢や体調などにより、熱中症の発症リスクは異なります。熱中症患者のおよそ半数は65歳以上といわれていますが、これはこの年代の方が暑さを感じにくく、暑さに対する体温調節機能が低下しているためと考えられています。また、子どもは体温調節機能が未発達で、気温が上がると体温が急激に上昇しやすいため、注意が必要です。
食欲が落ちて体力が低下している時、水分補給が不十分な時、下痢が続いている時などは、発汗による体温調節機能が上手く働かず、普段より熱中症のリスクが高まる可能性があります。
(3) 行動
強い日差しのもとでの激しい運動や屋外作業などの行動も熱中症を引き起こす要因の一つです。適切な水分補給をしていない、屋外で活動した後に適切に体を冷やしていないなどの行動も含まれるため、正しい対策を行うことが熱中症の予防に繋がります。


2. 熱中症を防ぐためのポイント
熱中症は、適切な対策を行うことで防ぐことができます。以下のポイントを意識しましょう。
(1) 水分と塩分をこまめに補給する
一度に大量の水分補給をするのではなく、少しずつこまめに水分補給をすることが大切です。そのため、外出時は飲料を持参し、意識的に水分を摂るようにしましょう。
目安として、1日1.5~2.0Lの水分を、のどの渇きを感じる前に、1回当たり150~200 mℓ程度飲むのが理想です。のどの渇きを感じた時点では、既に脱水が始まっている可能性があります。
また、汗を多くかいた時は、失われた水分と塩分を補うために、塩分と糖質を含む飲料(スポーツドリンクなど)がおすすめです。糖質を一緒に摂ることで、水分の吸収がより効率的に行われます。ほかにも、塩分タブレットなど、持ち運びやすい補給食もあります。


普段の水分補給には、カフェインを含まない麦茶や水などを利用しましょう。カフェインやアルコールを含む飲料は利尿作用があるため、水分補給目的としては避けた方が良いでしょう。
(2) 暑い時期の食事のポイント
・ 朝食を取る
人は就寝中に約500 mℓの水分を汗などで失うといわれているため、起床時の体は水分を求めています。この状態で水分を摂らずにいると、体内の水分量が減少し、熱中症を引き起こしやすくなるため、特に暑い時期は、朝食をしっかり取ることが重要です。朝食には、水分と塩分を補うことができる味噌汁やスープ、また、暑い日でも食べやすく、水分と糖分を補うことができる果物などがおすすめです。
・ ビタミンB1を摂る
ビタミンB1は、ご飯やパン、麺類などの炭水化物を効率よくエネルギーに変える栄養素です。不足すると、疲れや食欲低下に繋がるといわれています。食材としては、豚肉や大豆製品、玄米、ナッツ類などがあります。但し、ビタミンB1は高温に弱く、水に溶けやすい性質があるため、食材からゆで汁や煮汁に流出します。そのため、汁物やスープとして摂取することがおすすめです。


(3)暑さを避ける
夏の日差しは、強い紫外線と高温を伴い、体温調節機能に負担をかけるため、日差しを避ける工夫が必要です。例えば、「熱中症警戒アラート」が発表された日や日差しの強い時間帯(特に午前10時~午後3時)に外出を控える、外出する際は帽子や日傘を活用するなどの方法があります。屋内では、カーテンなどを利用し、窓から降り注ぐ日差しを遮断することで、暑さを軽減する方法もあります。そのほか、温湿度計を室内に設置するなどして、室温と湿度をこまめにチェックしましょう。
(4)体を冷やす工夫をする
気温の高い場所では、効率的に体を冷やす方法として、保冷剤や濡らしたタオル、氷のうを太い血管の流れる部位(首元、脇の下など)に当てると効果的です。そのほか、通気性の良い、吸湿性・速乾性のある衣類を着用することも工夫の一つです。
3. 熱中症の主な症状と応急処置
熱中症は、初期症状のうちに適切に対処することが大切です。以下の症状が見られる場合、熱中症の可能性があるため、応急処置を行いましょう。


~応急処置のポイント~
・ 涼しい場所へ移動する:
屋外なら日陰や風通しの良い場所、 屋内ならエアコンが効いている部屋へ移動しましょう。
・ 衣服をゆるめ、体を冷やす:
首、脇の下、太ももの付け根を、氷や濡らしたタオル、氷のうで冷やすと効果的です。皮膚を濡らして扇風機やうちわで扇ぐのも良い方法です。
・ 水分と塩分を補給する:
水分と塩分を一緒に補給しやすいスポーツドリンクや経口補水液を飲みましょう。また、冷たい飲み物は胃の表面から熱を奪います。体温を下げる効果が期待出来るため、なるべく冷たい飲み物を用意しましょう。
応急処置を行っても症状が改善しない場合は、病院を受診しましょう。なお、暑い中ぐったりしているなど、熱中症が疑われる方を見かけた場合にも上記の応急処置が役立ちます。その際、自力で水が飲めない、こちらからの呼びかけへの応答が無い場合は、ためらわずに救急車を呼びましょう。


熱中症は、環境・体調・行動の3つが大きな要因といわれています。特に65歳以上のご高齢の方や子どもはリスクが高いため、周囲の気配りが大切です。水分補給や暑さ対策を行い、暑い季節を快適に過ごしましょう。
ドラッグインフォメーショングループ
2025.06.01