血圧は、季節により変動するといわれており、特に冬は上昇しやすい傾向にあります。
今回は、冬に血圧が上昇しやすい理由と、日常における対策のポイントをご紹介します。
もくじ
1.冬に血圧が上昇しやすい理由
(1) 気温の低下
(2) 運動不足と肥満
(3) 食生活の乱れ
2.日常の高血圧対策のポイント
(1) 食生活のポイント
①塩分を控える
②野菜・果物・大豆製品・海藻類を意識して摂る
③お酒は適量で楽しむ
(2) 運動のポイント
(3) 睡眠とストレス解消のポイント
1. 冬に血圧が上昇しやすい理由
冬は、次の3つの影響により血圧が上昇しやすいと考えられています。
(1) 気温の低下
気温が低下し体が冷えを感じると、体温を保つために交感神経が刺激され、血管が収縮することで血圧は上昇します。また、ストレスも血圧を上昇させる要因となります。体はストレスを受けると、「コルチゾール」というホルモンを分泌しますが、コルチゾールには血管を収縮させる働きがあります。そのため、寒さや冷え等の刺激も体のストレスとなり、血圧の上昇に影響します。
(2) 運動不足と肥満
寒い冬の時期は、体を動かす機会が少なくなり、運動不足になりがちです。運動不足により消費エネルギーが低下すると余分なエネルギーが体に蓄積されやすくなり、肥満のリスクが高まります。肥満の状態は、ホルモン等の働きに影響が出ることで、血圧も上昇しやすくなります。
また、運動は余分な塩分を排出する働きを高めますが、運動不足だとその働きが十分ではなくなるため、血圧の上昇に繋がります。
(3) 食生活の乱れ
年末年始は、クリスマスや忘年会、新年会等の飲酒の機会が多く、塩分の多い食事が増えたり飲酒量が増えたりする等、食生活も乱れがちです。塩分を過剰に摂ると、それを排出するために血管内の水分が多くなるため、血圧が上昇しやすくなります。また、習慣的に飲酒量が増えると、血圧が高くなりやすい傾向にあるといわれています。
なお、冬は「ヒートショック」にも注意が必要です。ヒートショックとは、暖かい場所から寒い場所へ移動する時等の急激な温度変化により血圧が急上昇・急下降し、血管や心臓に大きく負担がかかる現象で、心臓や血管の疾患が起こるリスクを高めます。
ヒートショックは、特に冬場のトイレ・洗面所・浴室等の場所で発生しやすいといわれているため、暖房器具を利用する等して、部屋間の温度差を小さくすると良いでしょう。
2. 日常の高血圧*1 対策のポイント
高血圧対策には、食事や運動等の生活習慣を見直すことが大切です。次にご紹介するポイントを参考に、出来ることから取り入れてみてはいかがでしょうか。
(1) 食生活のポイント
① 塩分を控える
食生活の中でまず意識したいのが、1日当たり男性7.5g未満・女性6.5g未満を目標に、塩分を控えることです。普段の食事で塩分を多く摂りがちな方は、酢や柑橘類等の酸味、コショウ等の香辛料、わさび等の薬味を料理に活用して、減塩を心がけましょう。だし等のうま味を活用するのも良いでしょう。
但し、低血圧の方や汗を大量にかいた時は、適度な塩分摂取が必要となるため、無理に控えることは避けましょう。
② 野菜・果物・大豆製品・海藻類を意識して摂る
塩分を控えることに加えて、カリウム・カルシウム・マグネシウムと食物繊維を摂ることが大切です。カリウムには、塩分の吸収を抑え、体外に排出する働きがあります。カルシウムとマグネシウムは、血管を収縮させて血液の流れを助け、血圧を調整してくれる働きがあるため、高血圧の予防に繋がります。また、食物繊維には、腸内の余分な糖質や脂質、塩分を体外に排出する働きがあります。これらの栄養素は、野菜・果物・大豆製品・海藻類等に比較的多く含まれますので、意識して摂るようにすると良いでしょう。
<各栄養素を多く含む食品の例>
<各栄養素を多く含む食品の例>
なお、外食が多い等の理由でつい食生活が乱れがちになる方は、血圧が高めの方*2に適した機能性表示食品や特定保健用食品、減塩に配慮した調味料等の商品を、ご自分の目的に合わせて利用する方法もあります。
ご自分に合った商品の選び方や、その他、食事に関するご質問等は、店頭の薬剤師や栄養士等の専門家へお気軽にご相談ください。
③ お酒は適量で楽しむ
習慣的に飲酒量が増えると、高血圧のリスクが高まります。飲酒の習慣がある方は、週2日は休肝日を設け、1日当たりの適量を目安に調整すると良いでしょう。適量は、性別・年齢・体質等にもよりますが、一般的には「1日平均純アルコールで20g程度(女性は半分の10g)」を目安にすると良いといわれています。
年末年始は飲酒の機会が増えがちですが、適量の範囲で楽しむことを心がけましょう。
(2) 運動のポイント
適度な運動を行うことは、血管を拡張して血圧を下げる効果がある等、血圧を安定させる助けになります。高血圧の対策としては、ストレッチやウォーキング、ヨガ等の有酸素運動が有効といわれています。週に3日以上、1回を10分程度に分けても良いので、毎日30分以上を目標に行うと良いでしょう。
運動する時間をつくるのが難しい方は、出来るだけ階段を使う、掃除や洗濯等の家事を積極的に行う等、日常生活の中で意識して体を動かすことを心がけましょう。
(3) 睡眠とストレス解消のポイント
睡眠不足やストレスは、交感神経を刺激し血管を収縮させ、血圧を上昇させるため、十分な睡眠時間とリラックスする時間を持つことが大切です。規則正しい生活を心がけ、軽く体を動かす、音楽を聞く、歌を歌う等、趣味の時間をつくり、ストレスを溜めないようにしましょう。
冬は、気温の変化等、様々な理由により、体調を崩しやすい時期でもあります。今回ご紹介した食事・運動・睡眠とストレス解消のポイントを参考に、体調・血圧の管理を心がけ、健康的な毎日を過ごしましょう。
*1:診察室血圧では140/90 mmHg以上、家庭血圧では135/85 mmHg以上を「高血圧」と呼ぶ。
(参考:日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019」)また、一般的に100/60 mmHg未満を「低血圧」と呼ぶ。
*2:血圧が高めの方:高血圧と診断されていない 最高血圧130~139 mmHg /最低血圧85~89 mmHg の血圧の方
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2023.12.01