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歯周病を予防しよう

 歯周病は20代頃から年齢とともに増えてくる病気で、2016年に厚生労働省が行った実態調査では、30代以上の方の約7割が歯周病という結果が報告されています。歯周病は、お口のトラブルを引き起こすだけではなく、実は全身の健康にも関係していることが、近年の研究で分かってきています。
新年度がスタートし、健康診断を受診する機会に歯周病についての理解を深め、適切なケアを行うよう心がけましょう。

1. 歯周病とは

 歯周病は、歯の周囲の汚れ(歯垢)の中に住み着く歯周病の原因菌の毒素により、歯茎に炎症が起こり、歯を支える骨が溶けていく病気です。初期の歯茎にのみ炎症が起きている状態(歯肉炎)では歯茎の腫れや出血等がある以外に自覚症状は殆どありませんが、歯茎の炎症が進行すると、歯茎が下がる、口臭を感じる等の症状が目立つようになります。さらに進行すると歯茎から膿が出たり、痛みを感じるようになります。歯を支える骨まで感染が広がるため、歯もぐらつく状態になり、そのまま放置していると最終的に歯が抜けてしまいます。
 また、歯周病は単に歯が抜ける原因となるだけではなく、歯周病の原因菌が歯茎の血管から侵入し、その毒素によって心疾患や糖尿病、肥満、誤嚥性肺炎や認知症等、全身の様々な病気に影響を与えるといわれています。

 歯周病は痛み等の自覚症状が殆どなく静かに進行してしまうため、気付いた時には重症化していることもあります。歯周病対策のためには、歯周病のサインに早めに気付き、毎日の歯みがき等の適切なケアを行うことが大切です。

 次の表の項目について、ご自身に当てはまる項目が1つでもある場合には、歯周病対策に取り組みましょう。

 近年は感染症対策のため、マスクの着用が欠かせない生活が続いていますが、マスク着用時は息苦しさから口呼吸になりやすく、口の中が渇きやすくなります。口の中の乾燥は、歯垢が溜まりやすくなる、唾液による自浄作用が低下し細菌が活動しやすくなる等の理由により、歯周病や虫歯が進行しやすくなると考えられています。マスク着用時は鼻呼吸を意識するようにし、歯みがき等のケアを念入りに行うよう心がけましょう。

2. 歯周病対策のポイント

 歯周病対策の基本は、適切な歯みがき等のケアを行い、歯周病の原因菌が住み着く歯垢を溜め込まないように、しっかりと取り除くことが重要です。次のポイントを参考に、毎日のケアに取り組みましょう。

(1)歯みがきのポイント

 歯周病対策の基本は、毎日丁寧に歯を磨き、歯垢をしっかりと落とすことです。歯垢が付きやすい「歯と歯茎の境目」「歯と歯の間」「奥歯の噛み合わせの面」は、歯ブラシの毛先が届くように、次のポイントを意識して磨きましょう。

 始めに、「歯と歯茎の境目」の磨き方です。気を付ける点の1つ目は「毛先の当て方」。歯ブラシの毛先を、歯と歯茎の境目に45度の角度で当てて磨くと、歯と歯茎の境目の歯垢を落としやすくなります。

2つ目は、磨く時の「力加減」です。歯ブラシの毛先が広がらない程度の軽い力で磨きましょう。
3つ目は、「歯ブラシの動かし方」です。歯ブラシを小刻みに(5~10mmを目安)動かしながら、歯を1~2本ずつ、丁寧に磨くようにしましょう。歯垢はネバネバして粘着性が高いため、しっかりと落とすには1箇所につき20回程度磨くと良いでしょう。

 次に、「歯と歯の間」は歯ブラシの毛先が届き難いため、丁寧に歯みがきをしても歯垢が残りやすい部位です。少なくとも1日1回は、歯みがきの後にデンタルフロスや歯間ブラシを併用し、歯と歯の間の汚れを落とすようにしましょう。

 最後に、「奥歯の噛み合わせの面」は小さな溝がたくさんあり、歯ブラシが届きにくく、歯垢が溜まりやすい部位です。歯ブラシの毛先を水平に当て、小刻みに動かしながら、1本ずつ丁寧に磨くようにしましょう。
 細菌の繁殖を防ぐため、食後はなるべくすぐに歯を磨くようにしましょう。特に就寝中は、唾液の分泌量が減り、細菌が繁殖しやすくなります。そのため、就寝前は丁寧な歯みがきを心がけることや、歯みがきの後に殺菌成分の配合された洗口液等を使用すると良いでしょう。

(2)歯ブラシの選び方

 様々な形や大きさ、毛質の歯ブラシがありますが、歯周病対策に適したものを選びましょう。歯周病対策には、歯と歯茎の隙間を効率的に磨くことが出来る、毛先が細いタイプの歯ブラシを選びましょう。ヘッドの部分の大きさは、少し小さめの方が口の隅々まで磨きやすく、汚れも落としやすくなります。歯ブラシの毛は硬すぎると歯茎を傷付けてしまい、柔らかすぎると汚れを落としきることが出来ません。ご自身に合う硬さのものを見つけましょう。

 また、歯ブラシは毛先が開くと、歯を磨く能力は6割程度に落ちてしまいます。1ヶ月を目安に、新しい歯ブラシに取り替えましょう。

 なお、電動歯ブラシは歯垢除去効果が高く、短時間で歯をきれいに磨くことが出来ますが、歯茎に強く押し付けると傷付けてしまうこともあります。お使いになる場合には、軽く歯に当てるように使いましょう。

(3)歯みがき剤の選び方

 歯周病対策には、殺菌作用のあるイソプロピルメチルフェノール等の成分が配合された歯みがき剤を選びましょう。歯茎の健康も気になる場合には、歯茎の組織を修復するアラントインや、歯茎の炎症を抑えるトラネキサム酸等の成分が配合された歯みがき剤を選ぶと良いでしょう。なお、歯茎の腫れや出血等、気になる症状がある場合には、それらの症状を抑える天然ハーブが配合された医薬品(「アセス」等)や、抗炎症成分・組織修復成分等が配合された軟膏タイプの医薬品(「クリーンデンタルN」等)を利用する方法もあります。

 症状に応じた商品を選ぶ際に迷った場合は、薬剤師や登録販売者等の専門家にお気軽にご相談ください。

(4)禁煙しましょう

 たばこの煙に含まれる有害物質は、唾液の分泌量を減少させたり、歯垢を付着しやすくします。また、歯茎の血流を悪化させることで、歯周病菌が繁殖しやすい環境を作ります。喫煙者は非喫煙者に比べて4倍以上歯周病に罹りやすいともいわれているため、歯周病のリスクを下げるためにも、禁煙に取り組みましょう。

 歯周病対策には、ご紹介して来た歯みがき等のご自身で行うセルフケアのほか、歯科医院では、歯のクリーニングやお口の中をチェックしてもらうことで虫歯や歯周病の予防や早期発見にも繋がります。そのため、ご自身でのケアだけでなく定期的に歯科医院を受診すると良いでしょう。

 お口の健康を保つことは、健康寿命を延ばすことにも繋がります。今回ご紹介した歯周病対策のポイントを参考に、お口の健康を保ち、健やかな毎日を過ごしましょう。

出典元

・ 厚生労働省 e-ヘルスネット
(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-03-003.html)

参考資料

・ 伊東明彦・中村智徳 編(2021)今日のOTC薬 解説と便覧 改訂第5版 南江堂

ドラッグインフォメーショングループ

2023.03.01